「ブックオフ」に寄ったときに見つけた本。
「猫鳴り」という題名が気になり買いました。
作者は「沼田 まほるか」さん。
全く知りませんでした。
グーグルで検索すると、大阪府生まれで、私と同じ奈良県在住と分かり、急に親しみを覚えてしまいました。
「猫鳴り」は、3部構成です。
第1部は、捨て猫、子猫「モン」との出会い。
夫「藤治」52歳、妻「信枝」40歳、そんな夫婦が諦めかけていた高齢での妊娠、つかの間の夫婦の喜び、しかし、流産。
そんな時、聞いたのが仔猫の鳴き声。普通だったら仔猫をすぐに引き取って、お腹からいなくなった子どもを思い育てるのだろう、とついつい考えてしまいますが、全くその逆。
何度も何度も仔猫を捨てに行く。
そんな夫婦が仔猫を育てる決断をするまでの葛藤が続く。
クロもオジョーもわが家に来た時、一人反対した自分をさておき、思わず「もう、飼ってあげたら」と心の中で叫んでいる。
そんな時、突然、訪ねてきた小学生の「アヤメ」。
訳ありです。
第2部は、不登校になった中学生「行雄」が主人公。
行雄は父親との二人暮らし。行雄の前に現れる「アヤメ」だけ。
第1部に登場した藤治も信枝も登場なし。
行雄と父親との冷めた関係。
行雄の行動に見える深い闇。
ある日、父親が行雄にプレゼントした仔猫の「ペンギン」。
なぜ、仔猫の名前は「ペンギン」なの?
「ペンギン」を世話するようになって変化する行雄の心。
夫婦に飼われていた「モン」は、成猫になって最後の方に登場するだけ!
その登場のさせ方が衝撃的!
正直、一回の通読では、作者の意図や話の意味がよく理解できないまま第2部を読み終えました。
第3部は、老猫になった「モン」、老人になった「藤治」の二人だけの生活が描かれている。妻の「信枝」は既に他界している。
徐々に弱っていく「モン」、けなげに世話をする「藤治」の姿が克明に綴られている。
体が痩せ細っていく「モン」。
「特に理由はないが、猫鳴りが来るうちはモンは死なない」(p.184)
「猫鳴りをさせることが、かえって猫を疲れさせるのではないかと思ったが、どうしても一時の安堵がほしかった。」(p.184)
「モン」の死を覚悟する「藤治」。
「藤治が猫を看病しているというよりは、猫が藤治を看病している。どことなくそんな雰囲気がたしかにあった。」(p.195)
「じじい同士長く一緒にやってきたが、こいつはまるで、俺に手本を示しているみたいじゃないか。そう遠くない日に、俺自身が行かなけりゃなんない道を、自分が先に楽々と歩いて俺に見せているみたいだ。」(p.194)
死、「その日がきたとき、俺はきっと考えるだろ。モンのヤツが行けたんだから、俺だってちゃんといけるだろう、と」(p.194)
「猫鳴り」は、猫との出会い、そして別れが丁寧に書かれています。
読んでいくうちに、わが家のクロとオジョーの生い立ち、私自身をついつい重ねてしまい、命、生と死、そして今後を考えてしまう一冊になりました。