「ハケン飯友」には副題が付いている
「僕と猫の、食べて喋って笑う日々」だ
集英社オレンジ文庫は若者向けという印象がある
表紙の絵や挿絵も流行の漫画に出てくるカッコいい若者だ
一章が「猫は尻尾で春を呼ぶ」
二章が「人も猫も、夏は平たく長くなる」
三章が「庭の落ち葉に思うこと」
四章が「猫舌でも熱々は素敵」
章立てからして春夏秋冬を感じさせる
私がこの本を手に取ったのは、ありきたりだが猫が登場するからだ!
「まるでお店の客よろしくちょこんと座っているのは、一匹の猫だ」(p.17)
「おそらく、他の誰にこんな話をしても、とんだほら吹きか夢想癖のある人間だと思われるだろうが、今、僕たちの前にいる『猫』は、夜になると人間の姿に変身することができる」(p.19)
題名の「ハケンの飯友」の「飯友」で食べて喋って笑える相手がこの猫なのだ
主人公は「坂井さん」
ある食品会社で仕出し弁当のメニュー開発をしていたが、突然会社が倒産し無職になってしまう
住む家だけは祖父母の家を管理するという名目で確保されている
そんな時、心筋梗塞で倒れた年配の女性、沖守さんと出会う
今は天涯孤独な沖守さんと看病を通して親しくなり、沖守さんから仕事をオファーされる
その一つに喫茶「茶話 山猫軒」があり、得意の料理の腕前が生かされることになる
飯友「猫」との出会いは近所のある「叶木神社」
突然失職した日に「叶木神社」のお参りし二つの願い事をする
一つ目が「同じ食品関係で次の仕事が見つかりますように」
二つ目が「一人暮らしで友達もいない淋しい僕に、せめて、一緒に食事をしてくれる友達ができますように」
その夜、早速、願いが叶う
「勝手に家に入り込んできた猫は、僕の家のテーブルの下で人間の若い男性に変身して、『叶木神社の神様に言われて来た』と悪びれない笑顔で言った」(p.22)
飯友「猫」との出会いである
坂井さん、飯友の「ねこ」、沖守さん、そして、叶木神社の宮司でパン屋さんも営む猪田さんが加わり、副題にある「僕と猫の、食べて喋って笑う日々」が綴られている
坂井さんが作る料理の数々
「ねこ」の世界や「猫」から見た人間のこと
沖守さんや猪田さんの言葉から感じる人となり等・・・
また一冊、いい本と出会えた
この本はシリーズ化されているので、他も読んでみたい!
最後に「叶木神社」の名もそうだが、神社について考えることができた
「ご祭神、断じて、人間の言いなりになってくれる便利な道具とは違う。そやけどな。神社に来て、頭を下げて、柏手を打って、静かになった心に浮かんだ願い。それをご祭神に告げるとき、人は、自分にとっていちばん大切なことは何か、気づくことができる。それこそが、ご祭神のお導きなん違うかな。自分はそんな風に思う」(p.174)
「叶えるのは、願いを抱いたその人自身です。家内安全も、開運厄除けも、ご祭神願ってあとはぼーっとしといたら叶うような簡単なことではあらへんでしょう。ねえ?」(p.190)
「もし、人間が迷うとき、悩むとき、勇気を振り絞らなあかんとき、背中を押すまではくれんでも、そっと肩に手を添えてくれることはあるかもしれませんね」(p.190)
心に留めておきたい言葉だ!