知念実希人『黒猫の小夜曲(セレナーデ)』光文社文庫

猫好き必見!猫が登場する本紹介!

知念実希人『黒猫の小夜曲(セレナーデ)』は、

プロローブ

第一章 桜の季節の遺言状

第二章 ドッペルゲンガーの研究室

第三章 呪いのタトゥー

第四章 魂のペルソナ

エピローグ

の章立てになっている。

この本を手に取った時、章ごとに物語が綴られているのかな、と思いました。

第一章を読んだ時も、夫の死は、「桜の季節の遺言状」とタイトルの通り自殺だったのかの真相が描かれています。

この話が余韻の残る結末。

さあ、次はどんな物語かなと第二章を読むと登場人物も夫婦、妻の死を調べる刑事も登場し、第一章とは別の話と思い込んでいる。

読み進めるうちに、あれ?どういうこと?

この本は、第一章から第四章までがつながっているだと気づきました。

気づいてから、もう一度、第一章を読み直し、第二章を読み終える頃にはこの本に入り込むことができました。

さて、この本の主人公である黒猫の「クロ」、

わが家でいっしょに生活をしている黒猫「クロ」と同じ名前。

それだけで主人公「クロ」への愛着と親しみを感じました。

クロの正体は、黒猫の体をかしてもらって地上に降りてきた「地縛霊」の道案内人。

地縛霊(ぢばくれい)とは、「自分が死んだことを受け入れられなかったり、自分が死んだことを理解できなかったりして、死亡した時にいた土地や建物などから離れずにいるとされる霊のこと。あるいは、その土地に特別な理由を有して宿っているとされる死霊」

(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

クロの任務は、地縛霊を「我が主様」のところに導くこと。

そのクロといっしょに行動するのが「白木麻矢」と言う女性。

白木麻矢は昏睡状態で意識がなく病院のベッドに眠っている。

クロによって白木麻矢の体に入り込んだ地縛霊の女性「麻矢」。 

この地縛霊の女性は、自分が生きていた頃のことを全て忘れている。

「麻矢」のほんとうの名は?

麻矢の飼い猫がクロという設定で、クロが麻矢の協力を得て事件を探っていく。

白木麻矢の体に入り込んだ女性の地縛霊は誰なのか?

何の目的で体に入り込むことを望んだのか?

この事件に登場するのは製薬会社の関係者と新薬の開発の目指す研究者。

一体、何の新薬を研究していたのか?

その新薬の研究が事件とどう関係しているのか?

是非、読んでみてください。

この本は中に、クロと麻矢のこんなやり取りを見つけました。

クロ「最近の人間は全知全能にでもなったみたいに、自分たちが認知できないものはすべて『非科学 的』とか言って存在を否定するよね。」

麻矢「全知全能になったつもりなんてないわよ。だから少しでも進歩しようと頑張っているんでしょ」

クロ「まあ、頑張ってはいるかもしれないね。与えられた短い時間の中で何を遺し、それを次のジェネレーションに繋いでいく。それをくり返すことによって、種として大きく進歩していっているのは認めるよ。けど、せっかくの進歩を、自分たちの首を絞める方向に使っているふしもあるけどね。」

麻矢「私たちはべつに、種として進歩したいとか思って生きているわけじゃないんだけどな・・・。」

クロ「種の進化はあくまで結果論だからね。君たち個人個人がすべきことは、与えられた時間を必死に悔いなく生きることなんだと思うよ。そして、次のジェネレーションの誰かが、その想いを繋いでいってくれる。そうなれば、その人生にはきっと意味があったことになるんだろうね。」

麻矢「意味のある人生か・・・。」

クロ「とりあえず、進化がおかしな方向に行って、自分たちの手で絶滅したりしないで欲しいよ。長い間『道案内』として関わってきて、人間という種にはそれなりに思い入れがあるあるからさ。」

〔参照pp.259-260〕

作者がこの物語を通して伝えたいメッセージの一つなのだと共感しました。

他にもクロと同じ道案内人のレオ。レオは犬の体をかりて地上に降りてきている。

クロとレオの出会いと友情、そのやり取りもおもしろい。

最後に、この物語の中に書かれている猫の習性。少しだけ紹介します。

・「走る、ジャンプする、爪を出す、などの基本動作に加え、舌による全身の毛繕い、排泄後の砂かけ」(p.25)

・「僕はその場で香箱座り(こうばこずわり)をすると・・・。」(p.35)

・「猫にとって体が濡れるのは、このうえないストレスなのだ。」(p.72)

・「ネコの体は犬とは違うんだ!イライラすると尻尾が大きく動くんだよ。」(p.82)

・「相変わらず、クロの舌ってざらざらしているね。くすぐったい。」(中略)「野生の獲物をつかまえたときは、この舌のざらざらで獲物の皮を剥いで肉を食べるんだ」(p.271)

・「僕は香箱座りではなく、枕元で体を丸める(俗に『アンモニャイト』と呼ばれる姿勢だ)」(p.281)

・「僕は窓辺からベッドに飛び移ると、麻矢の二の腕を揉む。麻矢はゆっくりと目を開いた。」(p.405)

等々、生き方の上でも多くのことを学ぶことができました。

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