猫が登場していたのをすっかり忘れていた「料理人季蔵捕物控」!
「料理人季蔵捕物控」は、私が平成26年から新刊が出る度に読んでいる時代小説。
第1巻の「雛の鮨」から読みはじめ、最新刊の「焼き天ぷら」が第41巻。
主人公は、料理人「季蔵」。
季蔵は、もとは武士。
季蔵の許嫁が「瑠璃」。
仕えていた藩主の息子の横暴により、脱藩し食べるのにも苦労した時に、一膳めし屋「塩梅
屋」の主人に助けられ、料理の道に入る。
許嫁の「瑠璃」も、藩主の息子の横恋慕と藩主と息子の殺傷場面を見て、季蔵のことすら思い出せないような心の病を負っている。
そんな命すら危うい瑠璃を季蔵はずっと見守り続けている。
季蔵と瑠璃を取り巻く登場人物が一味も二味もあり、この42巻に及ぶこの物語を支えている。
「おき玖」は、李蔵を助けた先代の「塩梅屋」の主人の一人娘。
初めは季蔵の思いを寄せていたが、季蔵の瑠璃への深い思いを知り、今は南町奉行所同心の「伊沢蔵之介」の女房になり一児の母である。
烏谷椋十郎は北町奉行でこの物語の影の中心人物でもあり、季蔵の裏稼業のボスである。
内妻が「お涼」。
お涼が瑠璃と同居し、心の病を全部受け止め世話をしている。
烏谷椋十郎の部下が北町奉行所定町廻り同心の田端宗太郎と岡っ引きの松次。
季蔵はこの二人と協力し、烏谷椋十郎からの指令を果たしている。
その他にも、廻船問屋の主人「長崎屋五平」。別名、噺家松風亭玉輔。
塩梅屋の常連客である「喜平」、「辰吉」、「勝二」。
塩梅屋の下働きで、42巻の中でめきめき料理と菓子作りの腕を上げてきた「三吉」。
そして、季蔵を「兄貴」と慕う船頭の「豪助」。
この本のもう一つの魅力は季蔵が作る料理。
第1巻の「雛の鮨」から最新作の「焼き天ぷら」まで、四季折々の料理名が並んでいる。
料理を楽しむのであれば、何巻から読んでも十分に楽しめる時代小説である。
さて、このブログのテーマである「猫が登場する本紹介」、
実は最新作「焼き天ぷら」を読むまで、「猫が登場する本紹介」とは全く繋がらず、読んでいた。
「焼き天ぷら」の最終話、第六話「江戸のみつ豆」で事件の解決が見えてきた辺りに、
「虎吉は、元は迷い猫だったが、瑠璃のためには縄張りを超えて遠出をしても帰ることができたり、毒蛇にも立ち向かっていく。それで錆び猫の雌であったが飼い猫とする際に虎吉と命名された」(p.296)
「瑠璃の敵だと見做せば、たとえ相手が餌をくれるお涼さんであっても、虎吉は容赦しないだろう」(p.296)
そうだったんです!
「虎吉」という猫が登場していたんだ。
では、何時から登場したのか?
これまで発刊された41巻のどの巻で登場したのか?
読み返して調べるとしかないかな、うまくみつけられるかな、時間がかかりそう、と
本棚を見つめる。
不思議なもので、自分の中で何か感じることがあったのか?
手に取ったのが第30巻「桜おこわ」、第2話には「猫饅頭」。
頁をめくってみると、「ドンピシャ!」
「実は瑠璃さんが野良猫を餌付けしようとしているんです」(p.65)とお涼から知らされる場面を見つけた。
季蔵は瑠璃が猫好きであることを知っていた。
瑠璃は「さび猫の野良なんて」と皆が嫌う、それも雌猫に「虎吉」と名付けた。
瑠璃は「虎吉が帰ってきてくれるなんて夢みたい」(p.72)と季蔵に嬉しそうに話す。
過去に「虎吉」と名付けた猫との辛い別れがあったのだ。
第30巻から、ずっとさび猫の「虎吉」が瑠璃を守っていたのだ。
第41巻を読むまで、そのことを全く忘れていた。
今もこれまでと同様、書店に行く度に第42巻が出ていないか気に留めている。
虎吉と瑠璃の今後の関係も気になり、『料理人季蔵捕物控』が一層待ち遠しくなってきた!