「BOOKOFF」で本を探している時に偶然見つけた『猫』。
最初のページをめくると、昭和30年に中央公論社より発行されたと書かれていました。
第1話から第11話まで読むと、書かれた年が記載されているものもあり、
それを見ると、一番古い話で大正10年、新しい話でも昭和29年でした。
戦前、戦後の時代に、猫とともに生きる姿、個性豊かな猫の姿。
まさに「十人十色」の猫がいきいきと描かれています。
著者は井伏鱒二/谷崎潤一郎他、9人の作家です。
11人の作家が、猫との暮らしや猫への思を綴っています。
クラフト・エヴィング商會も巻末に、「忘れもの さがしもの」という猫のつぶやきを載せていて、これも必見です。
『猫』を書かれた著者と題名は下記の通りです。
<作者と題名>
第1話 有馬頼義『お軽はらきり』
第2話 猪熊弦一郎『みちゃん』
第3話 井伏鱒二『庭前』
第4話 大佛次郎『隅の隠居の話』(昭和21年)『猫騒動』
第5話 尾高京子『仔猫の太平洋横断』(昭和29年)
第6話 坂西志保『猫に仕える記』『猫族の紳士淑女』
第7話 瀧井孝作『小猫』(昭和23年)
第8話 谷崎潤一郎『ねこ』(昭和4年)『猫-マイペット』(昭和5年)
『客ぎらひ』(昭和23年)
第9話 壷井榮『木かげ』『猫と母性愛』
第10話 寺田寅彦『猫』(大正10年)『子猫』(大正12年)
第11話 柳田國男『どら猫観察記』(大正15年)『猫の島』(昭和14年)
巻 末 クラフト・エヴィング商會『忘れもの さがしもの』
私が特に面白かったのが、第1話の「お軽はらきり」。
「お軽」と言えば「勘平」。
『仮名手本忠臣蔵』に出てくる主人公の名です。
作者が飼い猫としてもらった雄と雌につけた名が「勘平」と「お軽」。
『仮名手本忠臣蔵』の話を少し知っているだけに、お軽と勘平の性格や行動の違い、作者とその妻が、お軽と勘平に接する言動が心に残りました。
もう1つ挙げるなら、第8話の中の『客ぎらひ』。
「猫は飼い主から名を呼ばれた時、ニャアと啼いて返事をするのが億劫であると、黙って、ちょっと尻尾の端を振って見せるのである。」(p.104)
思わず、「あるある」と頷いてしまいました。
何気ない猫の習性に思わず頷き、笑ってしまいます。
「自分にも尻尾があったらな!」と思う理由が、有名作家のユーモアのある本音かなと思ってしまいました。
「いい本に出会えたな。」と改めて感動しています。
時代は変わっていますが、「十人十色」の猫の中に、我が家の「オジョ」と「クロ」がいることを改めて実感させてくれた本になりました。