石田 祥の本は以前「猫を処方いたします」を読んでこのブログで紹介した
題名が「元カレの猫を、預かりまして」
「石田 祥」という名に引かれてこの本を手に取った
「『癒されたいな・・・』ふと気が抜けて、独り言が零れた」(p.5)から話が始まる
主人公は、セキュリティ関係の会社の主任をしている「柴田まさき」
会社では柴田主任と呼ばれる部下持ちの主任である
34歳、独身
ある日、元カレの「伊藤圭一」から、突然の連絡
「いや、ちょっとさ、まさきちゃんに頼みがあって」(p.12)
しかし、圭一はそれ以上言わず、電話が切れる
「もしかして、ヨリもどそうっていうのかな」など、思いを巡らすまさき
家に着くと圭一の姿はなく、代わりに紙袋がふたつ、段ボールが1つ置いてある
段ボールを開けた時の表現が笑ってしまう!
「一瞬、なんだかわからなかった。ただ、鼻がブタみたいで上向いていて、全身が、大掃除した雑巾みたいな灰茶色をしている。『ブサッ!』」(p.15)
圭一が置いていったのは「猫だ。かなりのブサ猫」(p.15)
このブサ猫がしゃべるのだ!
「悪いけど、しばらく面倒見たってや。(中略)ここで厄介になるわ。圭一があんたはええ人やゆうてたで。まあ、新しい同居人やと思って仲良く・・・」(p.17)
しかも、このブサ猫、関西弁でしゃべる!
紙袋に入っていたのは、臭くて汚い毛布
ブサ猫、ご愛用の寝具だ
ブサ猫の名前は「ヨミチ」、圭一が夜道で拾ったから「ヨミチ」と名付けたらしい
「なに、それ。変な名前」(p.23)
この日の夜から「まさき」と「ヨミチ」の生活が始まる。
1日目早々、家に帰った「まさき」は腰を抜かしそうになる
家の中がぐちゃぐちゃになっていたのだ
「おれもなあ、我慢したんや」とヨミチ
「このクソ猫。バカ猫。アホ猫」と怒り狂うまさき
「いや、マジですまん。でもな、いくら俺が喋れる猫やゆうても、所詮はただの猫や。猫がいる部屋に、そんなひらひらしたもんとか、爪立てたくなるもんを置いてる方が悪いわ。(中略)まさやん、形あるもんはいずれ壊れる運命なんや」(p.35)
「まあ、猫とクラスと暮らすというんはこういうこつや」と開きなおるヨミチ
「まさき」と「ヨミチ」のテンポのいいやり取りについつい笑ってしまう!
このテンポのよさにつられ、読む速さもアップする!
関西に住んでいるの、ヨミチのこてこての「関西弁」が弾みをつけてくれる
登場人物は「まさき」の会社関係
主任である「まさき」の働きぶりも書かれている
「よみち」との関係も、心の中を見抜かれたり、茶化されたりしながら深まっていく。
元カレ圭一との生活のようす
会社の後輩「矢代」への気持ちの変化
圭一が「まさき」に「ヨミチ」を託した理由も、やがて明らかになる。
そのあたりから終盤にかけてが、この物語の山場になるのだろう
最初によんだ石田 祥の「猫を処方いたします」とは真逆の感じもするが、猫を通じて人と人とが交錯する思いが伝わってきて、二つの作品が自分の中で結びついた気がした。