伽古屋 圭一「猫目荘のまかないごはん」角川文庫

猫好き必見!猫が登場する本紹介!

題名からまず想像してみた

「猫目荘」、「荘」が付いているのでアパートか文化住宅

今どき、文化住宅とは言わないかもしれない

木造2階建ての賃貸住宅?

「まかないごはん」、「まかない」とは食事の用意

食堂で働く人の昼ご飯のこと?

「猫目荘」なのだから、「猫目荘」で出される食事のこと

その「猫目荘」には猫が住んでいる?

そんなことを想像しながらこの本を手に取った

「古い建物だが、格安の家賃が魅力の下宿屋『猫目荘』、再就職も婚活もうまくいかずあせる伊緒は一番の新入りだ。食事は一緒、風呂も共同、住人は個性派揃いで戸惑うばかり。だが、2人の男性大家が作るまかないは、クリームシチューや豚キムチなどなじみの料理に旬の食材とアレンジを加え、目もお腹も幸せにしてくれる。そんな中、伊緒に思わぬ転機が――自分らしく生きたいと願うすべての人に贈る、おいしくて心温まる物語!」(表紙裏の紹介文)

「猫目荘」は下宿屋さんだったんだ!

猫は登場しないのか?と思いつつページを捲ると、主人公「降矢伊緒」が最初に下宿屋を訪ねた日に猫との出会いがかかれていた

「『なぁ』唐突に声が聞こえてきてびくりとする。反射的に半歩あとずさって下を見ると、猫がいた。どこから現れたのか、玄関前に立ち、もう一度「なぁ」と鳴く。ニャー、じゃない。確実に日本語で「なぁ」と言っている」(p.6)

「茶と白の毛色で、でっぷりと太った猫だ。ふてくされたような顔も逆に愛嬌がある。首輪をしているので、野良猫でも地域猫でもなさそう。この下宿屋で飼っている猫だろうか」(p.6)

「門柱のところにいるわたしの足もとまで、とことこ、いや、のたのたと近づいてきた。思わずしゃがんで『きみ、かわいいねー』と頭を撫でる」(p.7)

猫目荘の大家は二人で共同経営者

というより「山つながり」で猫目荘を経営する前から「パートナー」らしい

猫目荘をという名は、「ネコノメソウ」という山の渓流沿いで見かけるかわいらしい花から取ったとのこと

「ネコノメソウ」には「ミヤマネコノメソウ」や「コガネネコノメソウ」という種類があり、大家の「深山」と「小金井」を指しているそうだ

「猫」の名も「ネコノメソウ」の種類の「ボタンネコノメソウ」から取ったらしい

「猫」の名は「ボタン」、保護猫でオスとのこと

「ボタン」はこの本の主役ではないが、私の中では「絶大」だ

きっと、主人公の「降矢伊緒」に取っても特別な存在になっていくのなのだろう!

猫目荘経営の理念にも感銘を受けた

「交流はなくとも、食事をともにして、顔見知りになるだけでも繋がりは実感できます(中略)こういう自由で、しがらみのないゆるやかな繋がりが、現代に必要な新しいコミュニティのかたちかな」(p.68)

読み進めていく中で、この理念の意味がわかってくる!

「ネコノメソウ」は春夏秋冬の6部構成

登場人物は主人公「降矢伊緒」

二人の大家

「ネコノメソウ」を紹介した主人公の友だち

ユーチューバーや俳優

コーヒー店の経営者

先端恐怖症の女性

そして、出会ったことのない謎の住人

皆、個性豊かで自分にしかできない生き方をしている

そんな生き方に辿り着くまでにどんな苦労や遍歴があったのか・・・

何より主人公が「猫目荘」に辿り着くまでの過程が現在社会の生きにくさと重なる

誰かと比較するのではなく、自分の生き方を見つけてほしい!

それぞれの価値観が認められる自分でありたい!

そんなことを思う一冊になった

一年が過ぎたある日

「『えっとボタンさん?今からわたしその敷石きれいにしたいんですけど』彼は尻尾だけ動かして返事をした。(中略)まったく動かないところからすると答えは『待ちたまえ』なのだろう」(p.283)

「しょうがないなぁ、と笑いながらわたしは雑巾の入ったバケツを地面に置いた。その水面に、桜の花びらが落ちる」(p.283)

主人公とその横で佇むボタン、暖かな桜の季節の光景が見えた頃、この本を読み終えた

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