「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」(p.8)という夏目漱石の「吾輩は猫である」の引用。
「ぼくは名前があるという一点おいてのみ、そのえらい猫に勝っている」(p.8)と雄猫「なな」の語りから始まる小説「旅猫リポート」。
主人公は雄猫「なな」と飼い主のサトル。
ある夜、「なな」が交通事故遭った。
けがは「噛み傷、切り傷なら大概ひどいものでもこの舌一枚で南都がしてきたが、こうなるとちょっと無理だ。」(p.13)という程の生死にかかわる大怪我。
サトルに助けられ、「怪我が治るまで、僕は男の部屋に身を寄せることになった。」(p.15)なな。
サトルからしっぽの形が、「上から見ると数字の7に見えるんだよ」という理由で「なな」という命名される。
それから、ななとサトルの生活が始まる。
「僕はすっかり壮年になった。サトルは三十を少し超えていた。」(p.20)頃、
サトルから
「ナナ、ごめんな」(p.21)
「お前を手放すつもりはなかったんだけど」(p.21)と言われ、ななの新し飼い主を探す旅が始まる。
サトルがななの新しい飼い主を求めて訪ねたのが、「コースケ」「ヨシミネ」「スギとチカコ」の友だち、そして、叔母の「ノリコ」。
でも、どうしてサトルはななといっしょに暮せなくなったのか・・・?
この続きは、やっぱり・・・です。
「ぜひ、ご一読を!」という言葉しか見つかりません。
視点を変え、この小説に引き込まれたのは、物語の展開の中で書かれている猫の習性です。
<小説の中から引用>
☆「僕たち猫は、こんなに小さくても狩る側だ。狩りをする者とはつまり戦う者だ。」(p.229)
☆「空いた箱とか紙袋とかに入るのがすきなんだよね、猫。あと狭い隙間とか」(p.259)
☆「尻尾なんてよっぽど気心知れた奴じゃないといきなりさわらせないよ。」(p.266)
☆「まず頭とか、耳の後ろとか。馴染んできたら顎の下もいいけど」(p.267)
☆「大丈夫だよ、気持ちがいいとゴロゴロ喉をならすんだ」(p.269)
☆「こればっかりは、本能としか言いようがない。あまねく猫は自分がすっぽり収まるすてきな隙間を常に探し続けているのである。」(p.276)
☆「ハチや僕みたいに「惜しい」三毛ではなく、生粋の三毛。そして、生粋だからもちろん雌だ。」(p.324)
等等。
ついつい「うんうん」、「なるほど」、「あるある」、「あっ、そうだったんだ。」と頷いてしまいました。
猫好きの方には当たり前のことかもしれませんが、「猫は苦手」が人にとっては、猫を理解する一助になるのではと思いました。