「好きなものは何かといわれて、真っ先に思い浮かぶのは猫である。それもペルシャ猫みたいな洋風の長毛種ではなく、横丁を走り回っているような、短毛の駄猫(だびょう)が一番好きなのだ。私は、猫好きではなかった。何を考えているのか分からないし、人間には尻尾を振らないし、なんだかとってもずるい動物のような気がしていた。(中略)しかし、たまたま私の実家に母猫が子猫を連れて居すわったのをきっかけとして、私と猫たちの生活が始まったのである。」(p.12)で始まるこの本。
Ⅰ「私と猫たちの生活」、Ⅱ「話の好きな猫」、Ⅲ「町の猫たち」、Ⅳ「猫の人生」の4部作で構成されている。
はじめて家にやってきた母猫トラと子猫、その後、ぶー、ぶよ、コマネチ、チャリ、ぶち、あんちゃん、ビー、ノムチャイ、長介、クロ、シロ、シイ、三毛ちゃん、老女王が最後に登場する。(書き忘れた猫がいるかも)
「私の理想の町は、のら猫やのら犬が、ひょこひょこと歩いている町である。特別かわいがられるでも、いじめられるでもなく、ごく普通にそこにいる。しかし、現実の世の中は、所属がわからない人や動物に対して、とても冷たくなってきているし、そのうちこれが理想どころか、幻の町になってしまうのではないかと、暗澹たる気持ちになるのだ。」(pp.106-107)という作者の思いが自然と伝わってきた。