表紙の挿絵がカレーライスの横に座っている黒猫。
黒猫が主人公の本なのか?
羽田空港搭乗口付近のソファーでの回想シーンから始まるプロローグ。
「足元に黒い猫が飛び出してきて、相沢は立ち止まる。」(p.10)
「ふっくらとしたその黒猫は、ゆったりとした足の運びで、路地を左に曲がっていった。」(p.10)
「モンローウォークとでも呼びたくなるような小粋な歩き方に惹かれ、相沢も道を曲がる。」(p.10)
黒猫に誘われて足を踏み入れた「ねこみち横丁」
その奥にある「BAR追分」にたどり着く。
店の前に置かれている洋酒の樽が黒猫の居場所らしい。
「帰ってきたの?待ってて、直ぐ行くから、逃げちゃだめだよ、こらデビィ!」の声で、
黒猫の名前が「デビィ」であることがわかる。
BAR追分は、誰もが想像する「バー」なのか?
「BAR追分 昼はバールで、夜はバー。」(p.210)
この本の最後の文である。
プロローグ後、
第1話 スープの時間
第2話 父の手土産
第3話 幸せのカレーライス
第4話 ボンボンショコラの唄
と続いていく。
しかし、この本で黒猫「デビィ」が登場するのは4箇所だけである。
「どこからか猫の鳴き声がして、洋酒の樽の上に黒猫が現れた。狛犬のようなポーズを取り、こちらを見上げている。」(中略)、「『この子はデビィ』 父が頭を撫でると、心地よさそうに目を閉じ、猫がその手をなめた。」(p.101)
「その女は『デビィ』と猫の名を呼びながら、店の裏手へ歩いて行った。(中略)現れた女性は
、BAR追分のスタッフのようだ。猫の名を呼び声の朗らかさに勇気づけられ、真奈は扉を開ける。」(p.110)
「目を閉じたら、樽の上でくつろいでいる黒猫の姿が浮かんだ。」(p.117)
「毎日続く、強い日差しのなか、バール追分のドアの前に白いパラソルが立てられた。それは玄関脇の樽の上を好む、猫のデビィの日よけのためだったが、小さなベンチを置いていたら、そこで酒や軽食を楽しむ人が出てきた。」(p.204)
「ねこみち横丁」振興会で働くことになった宇藤。
宇藤を取り巻く振興会の人々。
プロローグを入れ、全5話に登場する人々を読んでいくうちに、黒猫「デビィ」の存在が隠し味のように効いているように感じ、「猫が登場する本」として紹介したくなった。