和田はつ子『料理人季蔵捕物控』ハルキ文庫第43巻「さしみ朝膳」今回は猫の話ではなく・・・

猫好き必見!猫が登場する本紹介!

 

猫が登場していたのをすっかり忘れていた「料理人季蔵捕物控」!

「料理人季蔵捕物控」は、私が平成26年から新刊が出る度に読んでいる時代小説。

第1巻の「雛の鮨」から読みはじめ、第41巻「焼き天ぷら」を読んだとき、瑠璃を守り寄り添う虎吉に感動し、このブログのコーナー「猫が登場する本紹介」に書かせてもらいました。

登場人物は前々回の「猫が登場する本紹介」で書かせてもらっています。

今回は、最新作第43巻「さしみ朝膳」の話。

久しぶりに七夕御膳の試食役として、先代塩梅屋の一人娘「おき玖」が登場しています。

事件は、幽霊画鑑賞と怪談話の会の出張料理を五平から頼まれたことが発端。

そして、烏谷の「今事件ではないが、市中を揺るがしているのは流行風邪禍の後、食べ物商いが変わりつつあることだ」(p.116)の流行風邪禍は第40巻「天下一の粥」でその様子が書かれていて、現在のコロナ禍の時代を反映させる作者の意図が感じられます。

事件の顛末は読者に任せ、今回紹介したいと思った理由はハーブ。

江戸時代にもハーブが使われていることに驚き。

それと、8月1日は八朔。この日は徳川家康が江戸に入府した日とされ、将軍はもとより各大名が白帷子に長袴でお目見えの儀式が催されたらしい。

塩梅屋でも白い食材が使われる。三白と呼ばれるのは江戸市中ならでの食材で白米、豆腐、大根を指すらしい。

紹介されているハーブはカモミール、「季蔵はカミツレ茶を煎じて供した。(中略)小菊より小さな小さな野の花がカミツレ(カモミール)であった。」(p.145)

次はドクダミ。「ドクダミは十薬で用いる他は防虫剤になるのではないか」(p.186)そして、ドクダミを百役の長にかえる「ドクダミ酒」が紹介されている。

「ドクダミ酒には驚いたことにドクダミの青臭さは全くありません。野リンゴそっくりの芳香のたいそう美味な酒です」(p.187)とも紹介されている。

ドクダミと薄荷の蒸留水の作り方も紹介されている。

薄荷は言わずと知れたミント。

「季蔵はドクダミと薄荷で清風香を作ってみることにした。中段の蒸留槽にドクダミと薄荷の葉を半分ぐらいに詰める。下段の沸騰槽に水を入れ蠟燭の火で沸騰させる。すると蒸留槽のドクダミと薄荷の成分が混じり、上段の冷却槽の内側で水滴になる。その水滴が冷却槽の壁をつたって、蒸留槽下部の管から外へ排出される。これを瓶に溜め続けてでき上がる」(p.193)

理科の水上置換の方法を思い出し抽出液を作りたくなった。

さらにラベンダー。

「よい香りは心に効き目がある。ヒロハラワンデル(ラベンダー)、薫衣草(くぬえそう)とも言うが、その花が咲いたら・・・。」(p.227)

「沢山の薫衣草薫衣草からほんの少ししかとれない大変貴重な薫衣草油で、枕に垂らして眠りに就くとぐっすり眠れる効き目があるそうです」(p.228)

「薫衣草はこのままこうして嗅いでいても心にとっても優しいの。手折った後、乾かしてもずっと香る」(pp.228-229)

ミントもラベンダーもてっぺん畑のハーブ園に育っている。

<ミント(右) ラベンダー(下) ローズマリー(左)>

ドクダミはいつも草取りをしたときに抜いて捨てている。

そう言えばこの前、道の駅に寄った時、ドクダミ茶を見た。

一度、買って飲んでみようと思う。

まさかこの本にハーブが取り上げているとは思ってもいなかったので感動とともに、『料理人季蔵捕物控』へ愛着が強くなった。

最後に瑠璃と虎吉の関係も最後に書かれている。

事件解決後、「瑠璃は黙々と五体の布人形を作り始め、仕上げに色とりどりの綺麗な端切れを着物に仕立てて棚に置いた。瑠璃が手を合わせると虎吉も真似て座って両手を合わせているという」(p.312)

瑠璃と虎吉の互いの思いはますます深まっているようだ。

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